「お菓子放浪記」
図書館の児童書コーナーで発見。
あらすじをパッと読んで勝手に予想した第一印象は
(戦時中に初めて外国のお菓子エクレール(エクレア)を食べた
日本人の主人公は戦後、その味を求めて外国に飛び出して
パティシエの修行にでも行くのかな~)とか思ったけど全然違いましたw

戦前、戦中、戦後を通してみなしご少年の青春物語。
お菓子というのは主人公の少年のことで彼は甘いものが好きだった。
その少年が感化院に送られる際に見送りにつきそってくれた刑事さんが
あんぱんを買って与えてくれた、そのヒトの優しさに触れ、
まっすぐに生きようとした少年の成長物語。

うーん、読むにつれコレは自分の想像した内容と全くちがって
第二次世界大戦当時の日本のありふれていた様子を庶民目線で描いた
リアリズム作品だなーと思いつつ、
作者の熱の入りように感化され読み進めてしまいました。
主人公の少年の名前はシゲル。作者の西村滋と同じ名前です。
というのも作中に登場するキャラクターのほとんども実在するそうで
物語も作者の半生記、ほぼノンフィクションに近いお話になってます。

それだけに当時の街中にあふれる風景、
戦争前と戦争後の人々の思想の変化などかなりリアリティーがあります。
私も読んでいくうちに教科書にはけっして載りはしない
日本の歴史の暗部を覗いてしまって軽いショックを覚えました。
と、同時に
(ああ!こういうところを月蝕歌劇団の代表であり脚本家であった
高取英さんが演劇の中に落としこんでたな!)
といった点もちらほらあって感慨深いものもありました。

お菓子放浪記、初版は1976年に理論社の長編シリーズより発売。
テレビで連続ドラマ化されたり
全国青少年読書感想コンクールの課題図書にもなっている。
理論社の長編シリーズは専門学生時代に何冊か読んではいるけれど
この本はまったくノーチェック…というか記憶にすらない(汗)
ま、当時の20代前半の自分が読んだとしてもどれほど理解できたか
アヤシイので今、出会うべくして出会った本だということにしておこうw

かなーり間をおいての1994年に「続・お菓子放浪記」、
2003年には「お菓子放浪記 完結編」が出版されました。
今回、続けて3作品を読みました。
時代が時代なだけに主人公の仲間たちの行く末の
どれもがハッピーエンドというわけにはいかない。
戦争は残酷なものだなーとあらためて思う。